手紙セレクション / Selected Letters / 1832年7月13日(28歳)

凡例:緑字は訳注  薄紫字は音源に関する注

グルノーブル発、1832年7月13日
アンベール・フェラン宛

おやおや、大切な友よ、してみると、僕らは再会を果たせないのか!!!何と厄介な魔法を、僕らはかけられてしまったのだろう!僕は当地でもう何日も貴君のリヨンからの帰還の報せを待っていた。ところがどうだ、フォール夫人の話を聞けば、貴君はまだリヨンに行ってもいないというではないか!!お願いだ、せめて手紙くらい書いてくれたまえ。そちらの状況が知りたい。こちらはうんざりしてばかりだ(Je m’ennuie à périr)。デュボワの別荘に1日過ごしに行き、二人で大いに貴君の話をした。彼の奥さんはとても良い人だが、それ以上のことはない。イタリアから戻ってこの方、僕はひどくありきたりでつまらない人たちの只中で過ごしている。それだけはやめてくれるよう何度懇願しても、この人たちは、音楽、芸術、高級詩のことでひっきりなしに僕に話しかけ、会話を楽しもうとする。そして、これらの言葉をひどくぞんざいに扱う。酒、女、騒擾その他凡百の世間話でもするように。特に義弟[ナンシーの夫、カミーユ・パルのこと]ときては、恐ろしい程の話好きで、全くもって閉口だ。こんな人たちに囲まれ、僕は全くひとりぼっちに感じている。僕の思考、僕の情熱、僕の愛、僕の憎しみ、僕の軽蔑、僕の頭、僕の心等々、すべての点において。貴君を僕は求め、待ち望んでいる。だから、会おうではないか。もし貴君が幾日かリヨンに留まらなければならないのなら、そこで貴君と合流すべく、僕もリヨンに行く。それは、最初考えていた徒歩でベレーに行く案より、ずっとよいと思う。というのも、この暑さで、当初案はほぼ実行不能になってしまっているからね。

貴君に話したいことが山ほどある!現在のことも、将来のことも。なるべく早く意思疎通を図ることが何としても必要だ。時は待ってくれない。僕は、貴君が活動しなくなってしまうことを恐れている。借りている250フランも貴君に返さなくてはならない。やり方を知っていたら、また、今にも貴君と再会できると思っていたのでなかったら、とうの昔に送金していたのだが。この点についても指示してくれたまえ。カジミール・フォールは、デルフィーヌ・フォルニエという名の、有り余るほど美点を備えた(qui a deux cent cinquante mille qualités)栗色の髪の小柄で魅力的なヴィエンヌの女性と結婚する。彼はヴィエンヌに居を構える予定だ。

僕はまもなくラ・コートに戻る。だから返事はそこに送ってくれたまえ。父宛の手紙と間違われないよう、宛先には、僕の姓だけでなく、名も記してくれたまえ。

さようなら、何と頭をぼうっとさせることか、この暑さときたら!

さようなら(了)[書簡全集281]

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