手紙セレクション / Selected Letters / 1833年3月12日(29歳)

凡例:緑字は訳注  薄紫字は音源に関する注

[パリ発、1833年3月12日、][日付は郵便印による〜書簡全集2巻 p.90,n.3]
エドゥアール・ロシェ宛

親愛なエドゥアール、

新たな友情の証(あかし)[2月末に実行された1回目のソマシオンのこと]を僕に示してくれて有難う。シミアン[ラ・コートの公証人]にも、僕の心からの謝意を伝えてくれたまえ。僕は、この状況になって、君が頼みにしてよい人だということ、そして、父のいわゆる頑迷な用心深さに何を期待すべきだったかが、よく分かった。僕がまだ29歳半でしかなく、年齢的に子供の分類に属するものと扱われるということは、確かにそのとおりだ。父が最高権力者で、それ故、彼が正しいということだ。父は僕を、世の全ての父親たちが世の全ての息子たちを扱うように扱っている。僕がある一つの例外的な存在だというのに。そうなのだ、僕は、生まれつきの性質、これまでの生き方、強烈な感受性( ma sensibilité exaltée )、生死に無頓着なこと、あらゆるものに対する見方において、他人(ひと)と異なっている。父は僕を決して理解しなかったし、今後も決して理解しないだろう。僕はいつも、自分には父親がないと感じていた。

今は、次のソマシオンはせずにいてくれたまえ。すぐに結婚する必要がなくなっている。後でアンリエットが是非とも結婚したいと望んだ場合、君がしてくれた1回目の手続は、いつでも有効にカウントされる。

僕の可哀想なオフィーリアに起きた事故のことは、たぶん君も新聞等で知っていると思う。2輪馬車を降りようとして脛骨を折ってしまったのだ。幸いなことに、怪我は当初心配されたほど重くはなさそうだ。

さようなら、親愛なエドゥアール、君の誠実な友、

エクトル・ベルリオーズより

フィゲ、ロラン、シャルルによろしく。
パリをいつ発つことになるかは分からない。

1833年3月13日(了)[書簡全集327]

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