手紙セレクション / Selected Letters / 1833年7月21日

凡例:緑字は訳注  薄紫字は音源に関する注

ラ・コート・サンサンドレ発、1833年7月21日[発出地、日付は『家族の手紙』t.2,p.119による]
ルイ・ペネからベルリオーズ医師宛

(抄訳)

[ペネがベルリオーズから受け取った前出1833/7/15付の手紙からの長い引用の後]この打ち明け話の相手に私が選ばれたのは、たぶん私の実業家としての物質的で実際的な立場のせいでしょう。ですが、私は[ベルリオーズとの]真摯な友情に由来する義務を理解し、果たす術(すべ)を知っています。また、若輩ではありますが、父親が[我が子に関して]抱く種々の懸念のことも分かっています。今こうして私が貴方に、私自身がもし貴方の立場にあったなら人に果たして欲しいと望むであろう義務[=友人の窮境をその父に知らせる道義上の義務]を果たそうとして、自発的にお手紙を差し上げているのは、そのためです。貴方はご子息のことを私よりもよくご存知です。人生の一般の決まりは、彼にはどれも当てはまらないようです。彼にとっては、その心が高度に鍛えられ、明らかな卓越性の刻印を受けている少数の人々にとってそうであるように、種々の欲求( les désirs )は、名誉以外のいかなる代価を払っても満たさなければならないほど、差し迫ったものなのです。彼はそのお金を手に入れるでしょう。それは断言できます。ですが私は、この種のことに関して貴方と彼との間に誰かを配することにひどく嫌悪を覚えます。その上、彼が必要としているような額のお金は私の手持ち資金からは出せませんから、おそらく私は高い条件でしか、そのお金を彼に世話することができないでしょう。そして私は、この種の取引の悲惨な成り行きを数多く見てきています・・。さらに申し上げたいのは、このような額の求めは、エクトルの結婚の計画の成就と無縁ではないのではないかとの考えを私の心に生じさせたということです。[略](了)

[家族の手紙324]

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