手紙セレクション / Selected Letters / 1831年1月6日(27歳)

凡例:緑字は訳注

ラ・コート・サンタンドレ発、1831年1月6日
アンベール・フェラン宛

親愛な友よ、
月曜から、父の家に来ている。運命のイタリア旅行を開始したのだ。甘受せざるを得なかった胸を引き裂くような別離から、立ち直れずにいる。両親の優しさ、妹たちの思いやりも、僕の気を紛らわしてくれることはほとんどできない。だから、ここを発つ前に是非とも貴君に会いたい。僕ら[=エクトルとその家族]は来週末グルノーブルに行き、8日間滞在する。僕はそこからリヨンへ引き返し、ローヌ川を下ってマルセイユに行き、そこでチヴィタ・ヴェッキア[ティレニア海に面するローマの外港]へ行く蒸気客船に乗る。ローマは、そこから6リュー[1リューは約4キロメートル]だ。会いに来てくれたまえ、ここか、グルノーブルか、リヨンに。機会を逃さぬよう、前向きな返事を、すぐにくれたまえ。
貴君に話したいことが、山ほどある。貴君のことについても、僕のことについても。これほどの嵐[複数]が、僕らそれぞれの人生を揺さぶっている。だから、それに抗うため、僕らは集まる必要があると思うのだ。僕らは互いを理解している。これは、とても稀(まれ)なことだ。
僕は、猛烈な気持ちの高ぶりを覚えつつ、スポンティーニと別れた。彼はローマから手紙を書くことを僕に約束させ、僕を抱擁した。そして、サン・セヴァスティアンの修道院で神父をしている兄弟宛に紹介状を書いてくれた。
彼がくれたものすべてを貴君に見てもらいたいと思っている。
僕は今日、とても悲しく、これ以上書き続けられない。
すぐに返事を書いてくれるだろうね?ああ、気の毒なカミーユ、僕の守護天使、善良なエーリアル!8ヶ月か9ヶ月も経たないと、彼女に会えないとは!ああ、せめて、ヒース[荒地に群生するツツジ科の常緑低木]の茂るどこかの荒野で、2人で北風に揺られ、彼女の腕の中、ついに最後の眠りに就くことができるなら!
さようなら、大切な友よ。来てくれたまえ、頼むから。(了)[書簡全集202]

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