手紙セレクション / Selected Letters / 1825年1月21日(21歳)

パリ発、1825年1月21日
ルテシエ技師宛

一昨日のオペラ座での私の行動を、たいそう軽率なものとお考えになっていることと思います。もし何か言い訳が成り立つとすれば、それは、私もまた、貴方と同じように、デリヴィとサッキーニによって熱狂状態へと導かれていたということでしょう。ご連絡先をお訊ねしたことも、たいそう不躾ではなかったかと恐れていますが、それは貴方の誠実さに乗じようとしたものではありません。疑いなく、貴方のご職業は非常に重要なもので、パリでのご滞在期間も非常に限られているので、敢えてお目にかかりに参ることは遠慮されますが、代わりに、手紙を書かせていただき、貴方があの晩お示しになった素晴らしい感受性と、真に美しいものへの賞賛のお気持ちを(いずれも、失われて久しいものと考えていました。)、私がどれほど嬉しく感じたかを、お伝えしようと考えた次第です。
私は、作曲を志す音楽家で、ル・シュウールの門下生です。自らの芸術分野で情熱を傾けている若い音楽家にとって、聴衆が自らの流派の傑作の上演に冷やかで無感動な態度を示すのを目の当たりにし、グルック、サッキーニ、メユール、ル・シュウール、デリヴィ、崇高なブランシュ夫人、そして鋭敏な心を持った人々をエンスージアスムの極致へと導くすべてのものを、休みなく冒涜するのを耳にすることが、いかに悲しいことであるかは、ご理解いただけるものと思います。それゆえ、情熱をもった人々の中には、天才の作品を聴いて夢中になることを狂信又は偏見によって妨げられない人もあるのだと知ったときには、そうした人々と知り合うことだけでなく、そうした人々のことを広く世に知らせたいと願うのです。
貴方がもし3月19日にまだパリにおいでなら、たぶん私はサント・ジュヌヴィエーヌ教会で大規模なオーケストラに『荘厳ミサ曲』を演奏してもらえます。希望どおりにいけば、ソロはデリヴィが歌います。ご都合がつけられるようなら、ぜひ聴いていただきたく存じます。

敬具
エクトル・ベルリオーズ

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