手紙セレクション / Selected Letters / 1828年5月7日(24歳)

凡例:緑字は訳注

パリ発、1828年5月7日
パリ音楽院学長ケルビーニから宮内府芸術局長ラ・ロシュフーコー子爵宛

子爵閣下、
ベルリオーズ氏から提出された、演奏会開催のための当王立学校練習ホールの使用許可願いに関する、今月6日付けの閣下の書状を拝受しました。
本校主催の演奏会については来る日曜日、申請があれば本校が会場を提供する義務を負っている「アポロンの子ら協会」主催に係る演奏会については今月15日が、それぞれ最終日であり、5月18日については、ホールを使用する予定がない旨、ご回答申し上げます。しかしながら、ベルリオーズ氏の利益のために申し上げれば、本年、本校で開催された演奏会[複数]が成功を収めたことが、同氏が自らの演奏会に期待していると見受けられる成功に、極めて不利な影響を及ぼすものと懸念されます。何故ならば、これらの演奏会において、あれほど熱心に聴衆が聴きに来るようにするためには、徹底的な練習が必要だったからであります。また、行楽シーズンに入り、本学の演奏会ですら継続することが困難になっている、この時期に開催することも、ベルリオーズ氏の利益を、大いに損なうおそれがあります。
さらに申し上げれば、一連の演奏会の開催と、それに随伴する稽古が、不可避的に教官たちの不在を生じさせた結果、学生たちの学習に弛緩が生じており、小職としても、このあたりで、本来あるべき教育の秩序を回復すべきものと考えているところ、これ以上校内での演奏会開催が続けられるならば、小職の構想に従ってカリキュラムを迅速に再編することも、できなくなるのであります。
子爵閣下、さらにまた、本校の練習ホールにつきましては、今後、学外者、学生、その他の演奏家等、相手の如何を問わず、これまでのように、頻繁、安易に貸し出されるべきでないという点につきましても、ご理解を賜りたく存じます。それというのも、当ホールは、専ら本校主催の演奏活動の用に供さるべきものだからであります。
ベルリオーズ氏の要請を受け入れるか否かにつきましては、子爵閣下におかれまして、これら諸事情をご賢察の上、ご判断あるものと存じます。
敬具
王立音楽歌唱学校学長
L・ケルビーニ

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